LGBTQ・性的マイノリティと法――トランスジェンダーの諸問題
いわゆるLGBTQ、あるいは性的マイノリティなどといわれる問題領域が日本社会の中で注目を集めるようになってから久しいですが、はたしてLGBTQ・性的マイノリティといわれる人々の人権保障状況が充分に改善してきているといえるでしょうか? 残念ながらそうではないと思います。
日本国憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定し、個人の尊重や幸福追求権を定めているとされており、日本社会の大前提は個人の尊重ひいては人間の尊厳を尊重する考え方にあるはずです。その考え方からすれば、本来は性的な差異についてもすべて尊重されるはずですが、現実にはそうなっていません。性的な「マイノリティ」がいるとされ、その「問題」が議論されていること自体、日本社会の法制度が、また日本社会を構成する人々の意識が、「マイノリティ」をつくりだし「問題」を生じさせている結果といえるかもしれません。
本特集では、これらの問題領域の中から、まず「トランスジェンダー」といわれる人々の人権問題について、特に法的な観点からの分析や議論を紹介します。
「男」「女」の二元的な性別をベースとする考え方から、性の多様性を尊重する社会への移行・進展が志向されているなかでトランスジェンダーが抱える問題を考えると、私たちが当然であると考えていた男女の区別や見た目の男らしさ・女らしさを再考するきっかけとなります。本特集ではその課題にも切り込んでいきます。
目次
- (第1回)男女別施設・サービスとトランスジェンダーをめぐる問題(立石結夏・河本みま乃)
- (第2回)トランスジェンダーのパス度に関する裁判例の日米比較考(石橋達成)
- (第3回)トランスジェンダーと「性暴力論」を切り離す(立石結夏)
- (第4回)性同一性障害者特例法は何が問題か(谷口洋幸)
- (第5回)経済産業省事件再考――トイレ問題から差別問題へ・控訴審判決をめぐって(立石結夏)
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